カナヅチが泳げるようになった歴史の振り返り

ここ数年、市民プールに通っている。

多い時で週に一度、土日のどちらかに行って、少ない時は季節一つ分ぐらい行かなかったりもしている。

最近、泳いでいてうまくならないというか、成長を感じなくなってきている。

何事も出来るようになればなるほど、次の段階に成長するのに時間がかかるものだけど、そのせいでモチベーションが上がらないのでこれまでのことを振り返って改めて自分の成長を実感してみようと思った。

 

振り返りの最初は就職した時期ぐらい、にしてみる。

この頃、泳げなかった。

正確には学生時代の体育の授業とかで4泳法がどんなものかは知っていたし、それらの泳ぎ方っぽい動きはできたと思う。

しかし動きが出来ることと泳げることは別だ。

クロールは息継ぎはできなかったし、平泳ぎも溺れないようにもがいているのと区別ができないほどだった。背泳ぎは沈むし、バタフライに至っては腕を回せない。

プールで泳げば、壁を蹴ってから10mぐらいは進めただろう、という程度。

そんな状態なので海や川など水があるところに行きたい、という気持ちは全くなかった。

学生時代に「みんなで海に行く」なんてこともしていたが、正直海で周りほどテンションが上がることはなく、テンションが上がった振りをしていたような気がする。

あるいは、「みんなでどこかに行く」こと自体を楽しむことで海から目を逸らしていた気もする。

 

変わったのは就職して何年目かに伊豆諸島に遊びに行った時だった。

海とは関係なく非常に楽しかったのだけど、海も楽しかった。

当時「海を楽しいと思ったのは初めて!」と非常に楽しそうに話したのを覚えている。

綺麗な海、足にはフィンをつけて顔にはゴーグルとシュノーケルをつけてふわふわひらひらと泳ぎながら海の中を見るのが楽しかった。

溺れるしかなかった海で自由に行動出来ることが非常に楽しかった。

 

その翌年も泳げないままではあったけど、同じようにフィンとシュノーケルで伊豆諸島を楽しんだ。

もちろん浮き輪も手放せなかった。

そこでふと「泳げた方が楽しいかも」と思った。

今思えばこれが現在に繋がる転機だった。

 

さらにその翌年も伊豆諸島に遊びに行くことは決まっていたので週末にプールに通うことにした。

春ぐらいから数ヶ月通って平泳ぎが出来るようになった。

その年は海で砂浜から見えるぐらいの遠くにある岩場をぐるっと回ってまた海岸に帰って来る、ということが道具なしで出来るようになっていた。

これも嬉しかった。

 

その翌年は泳ぎには成長はなかったが、ダイエットということで夏場はプールに通っていた。

成長はなかったが、それでも長い時間泳ぐことは出来るようになっていた。

30分とか40分とか止まらずに平泳ぎをし続けることが出来るようになった。

 

次の転機はその翌年。

ダイエットのためにこの年も泳いでいた。

思いつきでトライアスロンを始めることにした。

トライアスロンだと基本的に泳ぎはクロールになる。

(その後、トライアスロンで会った人と話して平泳ぎの人もそれなりにいることを知るがそれはまた別の話)

クロールは先に書いた通り、形は知っていたが息継ぎができなかった。

まずやったことは、泳ぎ方の本を数冊買った。

それからはひたすら練習。

本を読んで、プールで溺れて、本を読んで、プールで溺れて、動画を見て、本を読んで、プールで溺れて、を繰り返した。

初めてのトライアスロンに出る時にはクロールで数百mはなんとか泳げるようになっていた。

トライアスロンではプールで750m、ただ、クロールだけで泳ぎきることは出来ず頻繁に平泳ぎを入れて息も絶え絶え、なんとか泳ぎ切った、という感じだった。

 

その次の年に向けて冬もプールで練習した(ような気がする)。

プールでなら安定してクロールで泳げたし、多少息継ぎに失敗しても泳ぎながらリカバリできるようになっていた。

この年は初めてのOW(オープンウォーター:要するに海)でのスイムが入るトライアスロンに出た。

この大会は毎年毎年、スイムが中止になるかならないかの境目ぐらいまで波が高くなる大会だった。

正直、開始10分で波の高さを見て心が折れていた。

途中で何度も海に浮かんでるライフセイバーの浮き輪の船に助けてもらって休憩しつつ、リタイアしたい気持ちを抑えながら泳いでいた。

息継ぎをすれば波がやってきて空気ではなくて海水を飲み込み、海の中を見れば底が見えず、陸地からも離れている。

溺れれば死ぬ、ということを常に感じながら必死に泳いだ。

1,500mを泳ぎきる前に時間切れとなって途中で大会側の船に水揚げされた。

 

他の参加者に話を聞けば関東近辺ではこの大会より波が激しいところはない、とか。

堤防に囲まれた海ではなくて、外からの波がそのまま打ち寄せるような海岸だった。

DNF(Do Not Finish:途中棄権)となったのが非常に悔しくて、来年こそは泳ぎきるという目標を定めつつも波に対するトラウマを抱えた大会になった。

なお、翌日の海は波が大変穏やかだった。

 

この年の冬、独学に限界を感じて水泳教室に入会した。

が、全然通わなかった。

だって寒いし遠いんだもん。春になったら退会した。

それでも数回通った中でいくつか収穫はあった。

その一つは背泳ぎが練習できる程度にできるようになったこと。

それまでは上を見ながら沈んでいくだけだったのが、浮かびながら前進できるようになった。

また、自分のクロールの泳ぎ方に大きな欠陥があることを疑っていた。

トライアスロンで泳ぎ終わって自転車に乗ると数分で腰の中の筋肉と思われるあたりが激痛に襲われるのが毎回だった。

これの原因はクロールの泳ぎ方にあるのではないかと思い、そのことを相談しつつ見てもらったがその原因となるほどではなさそうだった。

 

そんな調子で収穫はあったもののあまり真剣に練習はせずに昨年泳ぎ切れなかった大会にもう一度挑戦した。

海が荒れすぎてデュアスロンになっちゃった(デュアスロントライアスロンのスイムをランに変えたもの。このように天候などが原因で泳げない時にしばしばトライアスロンから変更される)。

この時も自転車では腰痛があったので原因は泳ぎではないとわかったのは余談。

なお、翌日の海は波が大変穏やかだった。

この大会は海の波を鎮める儀式か何かなんだろうか。

 

それが昨年のこと。

それからもプールには通って泳いでいる。

泳ぎは大分安定してきたとは思う。

とりあえず1km、みたいに長く泳げるようにはなった。

ただ、非常に遅い。

早く泳ぐためには回転をあげることと上手に泳ぐことがある。

回転をあげるのは簡単だけど、その回転で長距離を泳ぐのは厳しい。そのため、徐々に上げられるように練習するしかない。

上手に泳ぐことの方を考えているのだけど、こちらがよくわからない。

文字で、画像で、動画で、説明をインプットするも肝心の泳いでいる最中の自分が見えないから結果をフィードバック出来ない。

プールだから自分で自分を撮影なんてのも難しい。

そんなわけで最近、泳ぎの上達が見えなくなっていた。

 

こうして振り返ると何年も通っているつもりだったけど、その時々で目標が違うことがわかる。

現在、行き詰まっているように感じているのは早く泳ぐために上手なフォームで泳ぐこと。

泳ぎながらずっと自分の泳ぎを感じられるように気をつけてやってきたが、早く泳ぐ、という目標で見るようになったのはつい最近の話。

最初は泳げない状態から泳げるようになる、という出来なかったことを出来るようになる、という話だったからわかりやすかった。

今は出来ていることをもっと上手に出来るようになる、ということだから実感しにくいし難しい。

そのことを理解して慌てずに引き続き練習していこうと思う。

 

そもそも泳げるようになった後、その後も泳ぎに通っていたのはダイエットのためだった。

トライアスロンを始めたことで泳ぐことの目標が上達になって、そのためにどうしたら良いかあれこれと考えている。

この状態になっていることで既に当初のダイエットのために泳ぎ続けるということを考えずとも、泳ぎ続けることを達成出来ている。

悩みながら練習するだけで既に目標を達成している勝者なのだ。

振り返ってそれを実感したのであまり悩みすぎずやっていこう。